本間睦美さんの『混沌日和』(メモ)

利休忌のきりきりと髪結ひにけり → この種の原点も忘れずに

胎の子にせかされて行くどんど焼き → 詩や俳句の生まれる背景のようなもの

相槌を打ちそこなひて東風強し → こういう俳諧味(滑稽味)は大切にしたい

かまつかや目をそらさずに生きてゆけ → 和語の面白さ

相聞歌降りそそぐほど栗の花 → この把握は感性のなせる技か

蛞蝓のぬらぬら疑心暗鬼なり → こういう句作りを得意技にしたい

不毛なる言葉を捨てよ紅き薔薇 → この「不毛なる言葉」で痩せる思い

落葉焚く炎に貌のありにけり → この種のものが見えるのは俳眼だろう

神ほとけほどほどにゐて苺食ふ → これも得意技としたい

さくらんぼ頬ばる心理入門編 → 下五の把握は他人は真似ができない

腰曲げしひよつとこもゐる盆踊り → 俳句の原点はこういうところにあった

好き嫌ひ決着つけし烏瓜 → この「いさぎよさ」も大切にしたい

雪女も乳を余しているだろうか → 「なでもござれ」というのも得意技か

何故といふ問ひ不要なり黴生うる → 人が見えない所に俳眼が行く

秋茄子の天才といふ不幸もある → 句よりも作句している作者が面白いか

何もせず死んでゆくなら十三夜 → 西行の末裔か

躁鬱の狭間苗代ぐみの花 → 俳句の句作りと絵画の絵作りは似ているか

くよくよとのうぜんかづら咲いて散る → 石橋の俳人・増山美島に見せたいね

台風や仮名の役割漢字の役割 → 俳句をやっていると惚けることはない

恋多き時もありけり斑雪 → 連句の恋の句の感じ。俳句としては素直過ぎるか

穴まどひどつちへころんでも自分 → 詩でも俳句でも「自分」が主題

鬼やらひグリムに多すぎる不可解 → 謎句の雰囲気 

シナプスの悪戯が過ぎ春暑し → これも謎句か

赤まんま我が体内にある狂気 → これも詩人の魂

返り花助詞多すぎる文の癖 → 助詞が使いこなせるようになったら一流か

淡々と妻病む枝垂れ桜かな → 「妻」とは「ロールプレィング」だね

音程の違はぬ不思議時鳥 → シャッターチャンスと耳が良い

穴まどひ運命・才能・ケセラセラ → この「穴まどひ」も勿論「自分」

どこまでが本物シクラメン真つ赤 → 増山美島の『分類』の花の句(続き)

梅の花嘘で固めてくたばつちまへ → 睦美調の開眼か

ほたるぶくろ無口ですます日曜日 → 周囲から難解句と言われないか

これが恋ならばアナナス厚く切る → アナナス ?

そらで言ふ電話番号百舌鳥の声 → 比喩の句か

藁塚や出会ひたくなき人多し → 木村三男の系譜か

膝ふるへるほど夕焼けを見てゐたり → こういう句は忘れずに

鈴虫の死に急ぐほど鳴いてをり → 究極の主題は「生と死」

非力てふ存在があり黄砂降る → 社会性の句か

牛の子の大きなる目に麦の秋 → これも睦美調か

馬鈴薯の花は弱気であるらしい → 人間以外のものと会話できるのは凄い

畦焼きの一人二人と現れぬ → 風土性というのは大切にしたい

新米やずしりと兄妹年老いぬ → 生活実感のある句は大切にしたい

名を呼ばれたやうな気がして花八ツ手 → 増山美島さんが喜ぶだろう

芒の穂事の始めはあいうえお → この「あいうえお」をご教示を

コチュジャンの加減結局台風圏 → この「コチュジャン」をご教示を

饒舌の庭師が咲かす山法師 → 巧い句

ちちははの墓に溢れし秋桜 → 句会用の句よりもこういう句を

枯野道泣きたい時も泣けぬ質 → 枯野道は俳諧の道

棉虫や私はいつも同じ位置 → 加藤朱さんが「棉虫」は独壇場

藁塚が息吹き返す日暮かな → 下野の俳人として「藁塚」は重要な季語

パン焼いて今日は枯野を歩かふか → 口語でいくか文語でいくか

クリスティそして誰もゐなくなる熱帯夜 → 雰囲気がある

怖いもの知らずコスモスの生き方 → 増山美島の系譜

ふらここに人の来ぬ日の空青し → 俳句愛好者にはこういう句も

蛇の衣疑心暗鬼といふ魔物 → やはり季語も魔物だ

冬うらら魔女の鏡にある本心 → 女性にだけつくれる句

小春日はそつとしておくさるとかに → これも好きな人は好きになるだろう

夕蛙もう一仕事始めけり → やはり具象性が決め手

小六月童話生まれる日和なり → 今後はこういう句が多くなるか

草摘んでをれば瀬の音高まりぬ → 虚子というのは何時も射程内に

ふつと消えふつと現る川蛍 → 俳句というのはマイナーであることの自覚

目覚めたる雪嶺すでに紅の色 → 自分を喜ばす句をつくる

畦焼きにまた背が伸びし息子かな → 生活記録は欠かさずに

梅雨じめりおだてられたき我がゐる → 詩人はナルシスト

おろおろと時雨る賢治思ひ出す → 賢治などを中心に据えること賛成

スルタンの宝冬晴れのボスポラス → 面白い句 句会用か

春の雲驕りと悔いと諦めと → 創作とは自己を責めること

梨の花爺が付き添ふ登校班 → 生活実感がある